「ようへん」は、リレーションシップ教育とフリースクール、 新たな事業展開をはじめます!

2024年11月に立ち上げた「リレーションシップスクール ようへん」の事業を、①特化型プログラム提供と②居場所としてのフリースクールの2つに切り分けて再出発することにしました。

この記事では、なぜそう決めたのか、その背景と、これからのようへんについてお伝えします。

原点としてのきっかけ

原点としてのきっかけは、長男の不登校でした。

2023年春、長男は小学校2年生でした。人一倍繊細で、ASD特性と対人不安を持つ長男は、入学後から段々と笑顔が減り、学校に行くのを嫌がるようになりました。それでも私は仕事があるからと、嫌がる長男の背中を押して送り出し続けていました。そしてついに長男の心は限界を迎え、「もう生きていたくない」とつぶやきました。この言葉に、私は胸が潰れるようなショックを受けました。こんな言葉を言わせてしまった。長男をここまで追い詰めてしまったのは、私でした。

長男が学校に行けなくなったとき、真っ先に感じたのは、人とのつながりが途絶えることへの不安でした。

先生やクラスメイトとの関係がなくなること。同年代の友達と遊べなくなること。学習面の遅れも、もちろん心配でした。ただ、学びは長男自身がやりたいと思ったときに、いつでも取り戻せると考えていました。少しずつでも、自分のペースで進めていければよいのです。

一方で、人とのつながりは、一朝一夕に築けるものではありません。いろいろな人との関わり合いの中で、言葉を交わし、一緒に遊び、いざこざを経験し、喧嘩したり笑い合ったりすることで初めて、心を通じ合わせる喜びを感じることができます。その経験の積み重ねが、自分と他者の違いを知り、自信を育む土台になっていく。

長男の笑顔を見るのは、楽しいことを誰かと共有しているときや、一緒に遊んでいるときです。そういう瞬間、本当に輝いて見えます。だからこそ、この機会を失わせてはいけないと思いました。

既存の支援機関をいくつも訪ねましたが、長男に合う場所を見つけることができませんでした。ないなら、つくるしかない。そう思いました。

コミュニケーションが苦手な子どもたちが抱えるリスク

コミュニケーションが苦手な子どもたちが抱えるリスクについては、研究からも明らかになっています。そうした子どもたちは、安心できる居場所をつくることが難しく、自信を失うことで引きこもりがちになります。人と接する機会を避けるようになることで成長の機会を失い、さらに自信を喪失する、という負の連鎖に陥ってしまうのです。引きこもりの人数は推計146万人、50人にひとりという調査結果があり、実態はもっと多いとも言われています。

そして、この問題は不登校の子どもだけに限りません。学校に通っている子どもたちの中にも、人とつながることが苦手で、孤独を感じている子は多くいます。「おとなしい子」と片付けられがちですが、実は同じようにサポートを必要としているのです。

この負の連鎖を断ち切り、子どもたちが人とのつながりを通じて自信を取り戻し、自分を表現できる場所をつくりたい。そう思い、2023年10月から1年間のプレ期間を経て、2024年11月に「リレーションシップスクールようへん」を本開校しました。コミュニケーションの苦手さを持つ子どもに特化したプログラムを提供する、これまでにない形のフリースクールです。

既存の療育や支援の多くは、「どう話すか」というスキルの習得に重点を置いています。リレーションシップスクールようへんが大切にしてきたのは、それとは少し違うアプローチです。「誰と、どのような関係性で話すか」という関係性そのものに向き合い、人とつながる喜びを内側から育てること。これまでの支援に何か違和感を感じてきた親御さんや子どもたちに、届けたいと思っていました。

プログラムの開発と実践

ただ、必要な方に届けることが、思うようにできませんでした。コミュニケーションの苦手さを持つお子さんという対象の特性上、外に出て慣れない場所へ脚を運ぶことへのハードルが高く、自宅という場所での運営も相まって、必要な方に知っていただくこと自体が難しい状況でした。

それでも、プログラムの開発と実践には、時間をかけて着実に取り組みました。

苦手な場面を想定して安全な環境でリハーサルを繰り返すワーク、自分の考えや想いをカードゲームを通じて表現するワーク、クリエイティブなアイデアをプレゼンするワークなど、子どもたちが楽しみながら自己表現の体験を積み重ねられる独自のプログラムを、少しずつ形にしていきました。

そんな中で、転機が訪れました。

ある日、スーパーで買い物をしていたときのこと、長男に「チンゲン菜ってどこにあるかな?」と聞いてみたんです。すると長男は、「探してくるね」と、自分から店員さんに売り場を聞いて、取ってきてくれました。

私は、驚きで、その場で固まってしまいました。長男が、面識のない人に自分から話しかけるなんて、これまではほとんど考えられませんでした。

リレーションシップスクール ようへんでの取り組みを通じて、少しずつ変化は感じていました。自信を持ってプレゼンができるようになったこと。先生や同級生と、堂々と話せる場面が増えてきたこと。そして、自分から「学校にも行ってみようかな」と言うようになったこと。

このとき、取り組んできたことは間違っていなかったと確信しました。
そして同時に、まだ届けられていないもどかしさも強く感じました。

40名以上の専門家や支援者、当事者へのヒアリングから

また、2025年10月、NPO法人ETIC.の社会起業塾スタートアップコースに採択していただきました。
そこでの取り組みの中で、私が取り組む事業の解像度を上げるために、児童精神科医・臨床心理士・当事者の親御さんなど、40名以上の専門家や支援者、当事者の方々に話を聞きに行きました。

そこで見えてきたのは、コミュニケーションの苦手さを持つ子どもたちを取り巻く、厳しい現実でした。

不登校になると、居場所がなくなります。親御さんが仕事を辞めざるを得ないケースも多く、家庭の経済的な基盤が揺らいでしまうこともあります。そうなると、コミュニケーションの苦手さへのケアどころではない状況になってしまうのです。

加えて、親御さんの多くは学業への不安が大きく、コミュニケーションの苦手さへのケアの優先順位がどうしても上がりにくいという実態もありました。そして、必要性を感じてくださる場合でも、通わせることへの負担の大きさから、あきらめざるを得ないご家庭も少なくありませんでした。

ある臨床心理士の方からこんな言葉をいただきました。
「人とのつながりを築く機会を避けたまま大人になってしまうことで、社会的に人間関係で苦しむ方をたくさん見てきた」と。その言葉を聞きながら、これは個々人の問題ではなく、社会全体で向き合うべき問題なのだと、改めて強く感じました。

DIRFloortime®の日本の第一人者の児童精神科医の先生からは、リレーションシップスクールようへんのプログラムへの賛同の言葉をいただきました。と同時に、まず安心して集える居場所があることがすべての出発点だという言葉もいただきました。プログラムの中身だけでは届かない人たちがいる。そのことを、改めて突きつけられた気がしました。

ヒアリングを重ねる中で、少しずつ見えてきたことがありました。

コミュニケーションに特化したプログラムと、居場所としてのフリースクールは、切り分けて考えた方が、それぞれをより必要な方に届けられる。そして、お子さんへの直接的なアプローチが難しい場合でも、親御さんを通じて支援が届く仕組みをつくることができる、と。

特に、親御さんへのアプローチについては、自分自身の経験からも強く確信していることがありました。

リレーションシップスクールようへんでの取り組みを通じて実感してきたのは、子どもの変化は、プログラムの中だけではなく、日常生活への拡張を通じて育まれる、ということでした。家庭という場所で、日常の関わりの中で、親御さんがわが子の自己表現に光を当てる存在になったとき、子どもは少しずつ自分の内側にあるものを外に出せるようになっていきます。長男との関わりの中でも、何度もそのことを実感してきました。

「親御さんの関わり方を変える」という言い方をすることもありますが、私が伝えたいのは少し違います。お子さんはすでに、内側に豊かな世界を持っています。それを引き出すために、親御さんが光を当てる存在になる。そのプロセスを、一緒に歩むためのプログラムです。

「ようへん」としての再出発

この気づきをきっかけに、事業を2つに切り分けることを決めました。

ひとつは、リレーションシップ教育事業「ようへん」(yohen.jp)。コミュニケーションの苦手さを持つ子ども向けの特化プログラムに加え、新たに親御さん向けのプログラムを始めたいと考えています。完全オンライン対応で、全国どこからでも届けられる形にしていきます。

もうひとつは、フリースクールとして、学校が苦手な子どもたちが安心して過ごせる、地域に根ざした居場所です。自宅での運営から、より開かれた場所へ移行することを目指して、現在、地域の皆様のご支援をいただきながら準備を進めてきました。
2026年9月、市川市北国分(矢切駅近く)へ移転オープンします。詳細は、フリースクールようへんのホームページをご覧ください。

フリースクールようへん
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サービス提供内容・料金プランの更新について

今回の再出発にあたり、プログラムの内容と料金についても見直しを行いました。

これまでは、フリースクールとしての居場所機能とプログラム提供を一体で運営してきました。
今後は専門プログラムに特化した形での提供となるため、セッション時間・料金ともに更新しております。
詳細については、プログラムページをご確認ください。

ようへんを立ち上げてから1年半、必要な方に届けられないもどかしさを感じ続けてきました。ただ、その時間は無駄ではなかったと思います。長男や次男の変化を通じて確信を深め、多くの専門家や当事者の方々へのヒアリングを通じて社会課題の解像度を上げ、ようやく、より多くの方に届けられる形が少しずつ見えてきました。

コミュニケーションが苦手な子どもたちが、人とつながる喜びを感じながら、自分らしく輝ける社会をつくりたい。
その想いは変わらずに、これからも地道に、取り組んでいきたいと思います。

引き続き、よろしくお願いします。

ようへん代表 並木真人