DIR/Floortime®とは

DIR/Floortime®:発達支援の新たな地平を拓く決定版ガイド

「うちの子、どうしてこんなにこだわりが強いんだろう…」
「コミュニケーションがうまくいかなくて、どう接したらいいのかわからない…」
——お子さんの発達や行動について、そんな戸惑いや悩みを抱えることはありませんか?

DIR/Floortime®(ディー・アイ・アール・フロアタイム) は、発達の多様性を持つ子どもたちが、本来持っている力を最大限に引き出し、社会との豊かな関係を築いていくための、具体的なアプローチを提供する発達支援モデルです。

このページでは、DIR/Floortime®とは何か、その歴史、大切な3つのポイント、そして家庭や専門機関での具体的な活用例まで、この画期的なアプローチの全体像を分かりやすく解説します。
DIR/Floortime®について深く知りたいと思ったら、まずこの記事を読んでみてください。

目次

I. はじめに:DIR/Floortime®とは?

DIR/Floortime®は、アメリカの小児精神科医スタンレー・グリーンスパン博士らによって開発された、遊びを通じて子どもの“心の発達”を育む支援法です。
このアプローチの名前に含まれる「DIR」は、それぞれ以下のような意味を持っています:

  • D(Developmental):発達的な段階を大切にしながら、その子の“いま”に寄り添うこと
  • I(Individual-differences):感覚の敏感さや注意の向け方など、その子に固有の感じ方や得意・苦手を理解すること
  • R(Relationship-based):信頼できる大人との関係性を通じて、安心感や意欲が育まれること

「Floortime(フロアタイム)」とは、その名の通り子どもと一緒に“床に座って遊ぶ時間のことを意味します。
最大の特徴は子どもの目線まで大人が下りて寄り添うこと。
上から目線で指導するのではなく、子ども自身の興味関心に寄り添い、子ども主導の遊びの中で自然なやり取りを通して、感情の共有・やりとりの楽しさ・思考の広がりを育んでいきます。

DIR/Floortime®の目的は、単なるスキルの習得や行動のコントロールではありません。
「人と関わるって楽しい」
「伝えたい気持ちがある」
——そうした心の動きやつながりの芽を大切にし、自己調整力・コミュニケーション・思考力といった土台を育てていく、包括的な発達支援の枠組みです。

対象となる人々

DIR/Floortimeは、自閉スペクトラム症(ASD)の子どもを対象に開発された発達支援モデルです。
その後、ADHD(注意欠如・多動性障害)やLD(学習障害)、不安症、言語遅滞、トラウマを持つ子どもなど、より広い発達の課題を持つ子どもたちにも適応され、臨床的にも有効性が報告されています。

また、成人の発達障害支援や、家族支援、早期介入プログラムにも活用されており、年齢や診断に関わらず「発達的課題」に対応できる包括的アプローチへと進化しています。

従来の療育との違いと独自性

従来の療育法が、自閉症児に特定のスキルを身につけさせることに焦点を当てることが多いのに対し、DIR/Floortime®はより広範な発達を促すことに重点を置いています 。
このアプローチは、行動療法(ABA)と比較されることがありますが、一部の家族はDIR/FloortimeをABAの代替として、あるいは併用して選択しています 。特に、DIR/Floortime®は「子ども主導(child-led)」である点が大きな特徴です 。  

このアプローチの最も顕著な独自性の一つは、「いつでもどこでもフロアタイム」という原則です。
これは、リビングの床、裏庭、スーパーマーケット、公園など、文字通り「いつでもどこでも」日常生活の中で実践できる柔軟性を持つことを意味します 。
きょうだいや友達、あるいは大人だけで行うことも可能であり 、保護者やケアギバーが適切な指導を受けることで、常に専門家が自宅にいる必要がなく、親が主体的に関われる点も大きな利点です 。  

DIR/Floortime®は、感情が心と脳の成長にとって極めて重要であるという事実に深く根ざしています 。
発達支援の焦点を「問題行動の抑制」から「感情的なつながりを通じた内発的動機付けと全人的発達の促進」へとシフトさせる、より包括的で人間中心のアプローチであると理解されています。
これは、単に表面的なスキルを教え込むのではなく、子どもの感情や興味を起点に、より深い認知・社会性の発達を促すという点で、従来の行動療法とは一線を画しています。
このアプローチの目的は、「自己調節、積極的な関与、コミュニケーションスキル、共同での社会的問題解決能力、創造的で体系的な思考、反省的な推理力」といった多岐にわたる能力の育成です。
そして、「問題行動を抑えるのではなく、生まれ持った資質を最大限に発揮させる」ことに重きを置いていることから、この「全人的発達」への志向が、DIR/Floortime®の独自性と価値を際立たせています。  

II. DIR/Floortime®の歴史と発展

創始者スタンレー・グリーンスパン博士とセレナ・ウィーダー博士

DIR/Floortime®は、児童精神科医のスタンレー・グリーンスパン博士(Stanley Greenspan, M.D.)とセレナ・ウィーダー博士(Serena Wieder, Ph.D.)によって、1980年代後半に開発されました 。
グリーンスパン博士は、1979年の著書『Intelligence and Adaptation』でこのモデルの最初の概要を述べており 、1989年にはDIR/Floortime®モデルの枠組みを具体的に提示しました 。
このモデルは、特に自閉スペクトラム症を持つ子どもの感情的および発達的ニーズに応えることを目的とした、発達的、個別差、関係性に基づくモデル(DIRモデル)を基盤としています 。
ウィーダー博士もまた、このモデルの臨床ディレクターとして先駆的な役割を果たし、正式なトレーニングプログラムの推進に大きく貢献しました 。  

誕生から現在に至るまでの主要なマイルストーン

DIR/Floortime®は、その誕生以来、着実に発展を遂げてきました。
1989年にグリーンスパン博士がDIR/Floortime®モデルを提唱し、自閉スペクトラム症児の感情発達を理解するための枠組みを提供したことが大きな転換点となりました 。
このアプローチは、関係性、社会性スキル、意味のあるコミュニケーション、自発的な相互作用の活用を重視し、子どもの自然な発達を促すものです 。  

その後、1990年には国際発達学習評議会(ICDL: International Council on Development and Learning)が設立されました。
ICDLは当初、「子どもの発達障害の予防と治療のための財団」として活動を開始しました。
その後、DIRとFloortimeのトレーニングと普及の中心的な役割を担うようになりました。
現在、ICDLはDIRFloortime®の公式なトレーニングプログラムの本拠地となっています 。  

2005年には、感情発達を促進する上でのDIR/Floortime®の有効性が広く認識されるようになりました。
2015年には自閉スペクトラム症児に対する効果に関する包括的なレビューがその有効性を再確認しました。
また、2000年代以降は、学校現場でのDIR/Floortime®の活用を支持するエビデンスが増加しています。

国際的な普及と日本における導入の現状

DIR/Floortime®は現在、世界70カ国以上で導入され、各地で専門家によるプログラム提供が行われています。
ICDLは、世界中の参加者向けにオンライン集中講座を提供しています。
日本からの参加者向けには日本語の同時通訳や翻訳されたスライドが用意されるなど、言語の壁を越えた学習機会が提供されています。

日本におけるDIR/Floortime®の普及には、広瀬宏之氏(横須賀市療育相談センター所長)が重要な役割を担っています。
広瀬氏は、グリーンスパン博士の主要著書である『Engaging Autism: The Floortime Approach to Helping Children Relate, Communicate and Think』を『自閉症のDIR治療プログラム フロアタイムによる発達の促し』として日本語に翻訳・出版し、日本におけるDIR/Floortime®の理解と実践に大きく貢献しています。
伊藤穣一氏のはたらきかけによって、この翻訳書は2023年に再出版されました。
日本におけるDIR/Floortime®への関心の高まりと、その情報への需要を示しています。  

日本国内では、DIR/Floortime®に関する研究発表が増加しており、その成果が認められつつあります。
一部では、従来のABA療育からDIR/Floortime®へシフトする兆しが見えているという見解も出ています。
一方で、現状ではまだ認知度も低く、セラピストの数においてもABAがまだ圧倒的多数を占めています 。  
日本におけるDIR/Floortime®の普及が、主要な翻訳書の再出版やオンライン講座の提供によって加速しているものの、依然として専門家育成の課題を抱えていることを示唆しています。
この課題を克服し、より広範な層にリーチするためには、さらなるトレーニング機会の提供や啓発活動の必要性が考えられます。  

DIR/Floortime®の中核をなすのは、Developmental (発達段階)、Individual-Difference (個人差)、Relationship-Based (関係性) の3つの要素を統合したDIRモデルです 。これらは、子ども一人ひとりの内面的な成長を深く理解し、その可能性を最大限に引き出すための羅針盤となります。  

III. DIRモデルの3つの核となる視点

DIR/Floortime®のアプローチは、3つの基本的な視点に基づいています。それが「D(発達段階)」「I(個人差)」「R(関係性)」です。
この3つの視点は、それぞれが独立した考え方でありながら、相互に関わり合いながら子どもの発達を支える「枠組み」となっています。

DIRモデルが目指すのは、子どもの外側から行動を変えるのではなく、内側から湧き出る興味や感情を尊重し、その子らしいペースで発達をサポートすること。そのために、以下の3つの視点が常に連動して活用されます。


D:発達段階(Developmental)

DIR/Floortime®では、子どもがどのように感情的・社会的・認知的に発達していくかを「段階的な流れ」として捉えます。
この考え方の背景には、「感情こそが脳と心の発達の中心にある」という発達心理学の視点があります。たとえば、自分の気持ちを落ち着ける力、相手と一緒に楽しむ力、気持ちのやりとりを続ける力――これらはすべて、複雑な学びや社会性の土台となるものです。

DIRでは、その子が「今どの段階にいるか」を丁寧に見極め、次のステップに進めるような関わりをします。
その発達の段階は、以下のFEDC(Functional Emotional Developmental Capacities)という枠組みによって整理されています。

表:FEDC(情動発達段階)の概要

段階概要
FEDC 1:
情動的な
自律性の
確立
親と情動的に結びつき、快・不快の感情を共有できる
FEDC 2:
関係の継続
相手と情緒的なやりとりを繰り返しながら関係性を築く
FEDC 3:
双方向の
情動的
コミュニケーション
視線や表情などを通じて、気持ちのキャッチボールができる
FEDC 4:
意図的な
行動と
問題解決
自分の思いを行動で表現し、相手とやりとりしながら目的を達成しようとする
FEDC 5:
象徴的な
遊びと
創造的思考
見立て遊びなどを通じて、イメージを表現できるようになる
FEDC 6:
論理的・
因果的な
思考
自分や他者の気持ちを振り返ったり、未来を見通したりできるようになる

I:個人差(Individual-Differences)

DIR/Floortime®では、どの子どもも“その子ならではの感覚や特性”を持っていることが大前提です。
たとえば、大きな音が苦手だったり、体を動かすことで集中しやすかったり、視覚的な情報は得意でも言葉でのやりとりが難しかったり――子どもたちはそれぞれ異なる「感じ方」や「得意・不得意」を持っています。

こうした感覚や神経的な特性を理解せずに一律の関わりをしても、子どもは安心できず、自分を出すことができません。
DIRでは、「なぜその行動が出ているのか?」という背景にある神経特性に着目し、その子に合った方法で関わることを大切にしています。

具体的には、照明を柔らかくする、言葉ではなく視覚的なサポートを使う、安心できる手触りの素材を用意する――そういった細やかな調整によって、子どもが「自分らしくいられる場」を整えます。
このように、子どもの個人差を深く理解し、それに寄り添った支援を行うことが、DIRモデルの大きな特徴です。

R:関係性(Relationship-Based)

DIRの中心にあるのは、子どもと大人とのあたたかい関係性です。
発達は、人とのつながりの中でこそ育まれていく――これがDIRの根本的な考え方です。

特に大切にされるのが「子ども主導」の関わりです。大人が指示するのではなく、子どもの興味や感情の動きに寄り添いながら、その世界に一緒に入り込みます。
たとえば、子どもが車のおもちゃに夢中なら、大人も隣で同じように遊び、時には「うわ、速すぎて見えなかった!」などと気持ちをやりとりしながら遊びを広げていきます。

このような関わりを通じて、子どもは「この人といると楽しい」「自分の気持ちを受け取ってくれる」と感じ、安心して世界に関わろうとする力が育ちます。
DIRでは、このような「関係性」こそが発達を促す“乗り物”であると考えています。

この3つの視点(D・I・R)が一体となることで、子どもの「本質的な発達」が促されていきます。
つまり、スキルや行動の表面的な変化ではなく、「心が育つ」「自分を表現できるようになる」「人とつながっていく」――そんな深い変化を引き出すのがDIR/Floortime®のアプローチなのです。

IV. DIR/Floortime®の具体的な活用例

DIR/Floortime®は、特定の場所や時間、専門家がいなくても、日常の様々な場面で実践できる柔軟なアプローチです。
子供は年齢があがるに連れて、興味や感情の幅が広がり、考える力も育ってきます。
子どもの内側から育つ「主体性」や「関係性」を育む関わりがますます大切になります。

1. 家庭での実践例:日常会話や遊びを通じた感情のキャッチボール

DIR/Floortime®の魅力のひとつは、場所を選ばず、親子の対話や遊びの中で自然に取り入れられることです。

例えば、学校から帰ってきた子に「今日どうだった?」と聞く代わりに、表情や雰囲気を「観察(Watch)」し、言葉を急かさずに「待ち(Wait)」ます。そして、子どものランドセルの中身や表情から「どんな気持ちだったのかな?」と「思い巡らせ(Wonder)」てみます。

また、遊びや興味に親が付き合うことも大切な入り口です。例えば、子どもが図鑑に夢中になっているとき、一緒にページをめくって「この虫すごいね」と話しかけてみる。そこから「どうしてこれが好きなんだろう?」という探究の時間を共有できます。

このような対話や共感の積み重ねが、思考の整理や感情の表現につながり、子ども自身が「自分の気持ちや考えを言葉にしていいんだ」という安心感を育てていきます。

2. 感覚過敏・感覚鈍麻などへの対応:安心できる環境づくりと調整の工夫

小学生になると、「音が苦手」「服のタグが気になる」「教室のにおいがつらい」など、感覚に関する困りごとがはっきりしてくることもあります。

DIR/Floortime®では、まず子ども自身がどんな刺激に敏感か、あるいは反応しにくいのかを親子で一緒に把握することから始めます。たとえば、

  • 音が苦手 → イヤーマフを使ってみる
  • 触覚に敏感 → 肌ざわりのよい服を選ぶ
  • においが苦手 → 好きなにおいのハンカチを持たせる

など、無理に慣れさせるのではなく、「安心できる環境」を整えることが大切です。

そのうえで、少しずつ新しい感覚に出会う機会も作っていきます。「今日は少し大きな音の公園に行ってみようか」「いつもと違うスーパーに行ってみようか」など、挑戦のスモールステップを親子で設定し、「うまくいったね」と一緒に振り返ることも、自己調整力を育てる一歩です。

3. 人とのつながりを広げる関わり:家庭以外でも安心できる関係性を

年齢が上がるにつれ、友だち関係や先生とのやりとりなど、親以外との関係も増えてきます。けれど、人との関わりが苦手な子どもにとって、それは大きなハードルにもなりえます。

DIR/Floortime®では、まず「身近な人との関係」を丁寧に育てることを重視します。

たとえば:

  • 家族との雑談タイムをつくる
  • 興味のある話題で親が聞き役になり「うんうん、それでどう思った?」と受け止める
  • 「発表ごっこ」や「自己紹介ごっこ」で練習する

など、遊びや日常の中で「人と気持ちや考えをやり取りする楽しさ」に触れる機会を作ります。

また、親が「こういうとき、どう返したらいいかな?」とロールプレイをするのも有効です。例えば「友だちに遊ぼうって言われたけど、今日は乗り気じゃないとき、どう断ったらいいかな?」と、一緒に言葉を考えてみるなど、実生活に役立つスキルへとつながっていきます。

DIR/Floortime®は、子どもが本来持っている「知りたい」「伝えたい」「関わりたい」という気持ちを、大人との豊かなやり取りの中で育てるアプローチです。小学生という成長の節目にこそ、こうした関わりを通じて、自己表現力・関係性・思考の力がじっくりと育まれていきます。

必要なのは、「特別なこと」よりも、「日常の中の丁寧なまなざしと関わり」です。

補足|Floortimeセッションとの違いについて

本記事で紹介した内容は、あくまで日常の中での応用例です。専門家によるFloortimeセッションは、より明確なアセスメントと段階的な目標設定のもと、計画的に構造化された支援が行われます。一方、家庭での実践は「共に楽しみ、感じる」関わりを通じて、情動と関係性の土台を育むことが目的です。

V. まとめ:DIR/Floortime®がもたらす可能性

DIR/Floortime®は、子どもの「心の内側」からの発達を支える、関係性ベースの発達支援アプローチです。

その特徴は、特定の行動やスキルの習得をゴールとするのではなく、子どもの感情、感覚、認知、そして人とのつながりを大切にしながら、その子にとって自然な発達の流れを育んでいくことにあります。

アプローチの基盤である「D(発達)・I(個別性)・R(関係性)」の3つの視点は、どの子も唯一無二の存在であるという理解に立脚し、その子のペースや気質、興味に合わせた関わりを可能にします。
また、6つの発達段階(FEDC)を軸に、子どもがどのような感情的・社会的なやり取りを積み重ねていけばよいかを丁寧に見立てながら、家庭でも日常的に実践できる柔軟性を持っています。

そのためDIR/Floortime®は、自閉スペクトラム症(ASD)をはじめとする多様な発達の特性を持つ子どもたちに対して、単なる支援ではなく「一緒に育っていく関係づくり」の手法として、世界中の保護者・専門家に広く支持されています。

もしあなたのお子さんが「人とのやりとりがうまくいかない」「自分を表現することが苦手」など、目には見えにくい“困りごと”を抱えているように感じるなら、DIR/Floortime®のアプローチが新たな視点をもたらしてくれるかもしれません。

国際的な公式機関である ICDL(The Interdisciplinary Council on Development and Learning) では、専門家向けの認定プログラムや、保護者が学べるオンライン講座も提供されています。日本語対応の講座もあり、家庭での実践に活かすヒントを得ることができます。

「ただ正しく教える」のではなく、「一緒に楽しむ・共に感じる」ことを出発点に、子どもとの関係性を通じて発達を支えること、それがDIR/Floortime®の最大の魅力です。
どんな小さなやりとりも、発達の芽生えにつながるかけがえのない瞬間として、大人も子どもも共に育っていく——そんな豊かな時間が、きっとそこにはあります。

今後の展望と日本におけるさらなる普及への期待

日本においても、DIR/Floortime®への関心は高まっており、関連書籍の再出版やセミナーの開催を通じて、その理解と実践が広がりつつあります 。今後は、より多くの専門家や保護者がDIR/Floortime®のトレーニングを受け、その実践が全国に広がることで、発達に課題を持つ子どもたちとその家族が、より質の高い、個別化された支援を受けられるようになることが期待されます。  

DIR/Floortime®の普及は、日本の発達支援のあり方そのものに大きな変革をもたらす可能性を秘めています。特に、家庭での実践を重視するアプローチは、「いつでもどこでもフロアタイム」という概念が示すように 、専門機関へのアクセスが限られる地域や家庭にとって、質の高い支援を日常的に提供できる画期的な解決策となり得ます。保護者が療育に積極的に関わることで、専門家不足という既存の課題を克服し、より広範な地域で質の高い支援を提供できる可能性が見えてきます 。これは、日本の発達支援システム全体にポジティブな影響を与える社会変革の可能性を秘めています。

参考リンク・参考書籍

公式情報

  • The International Council on Development and Learning (ICDL) 公式サイト: www.icdl.com
    • DIRFloortime®トレーニングプログラム、認定コース、研究情報などが提供されています。
    • 日本向けのオンライン集中講座(日本語同時通訳付き)の情報も掲載されています。
  • ICDLのDIR/Floortime研究ページ: www.icdl.com/research  

主要な原著および日本語翻訳書籍

  • スタンレー・グリーンスパン & セレーナ・ウィーダー 著、広瀬宏之 訳『自閉症のDIR治療プログラム: フロアタイムによる発達の促し』 (金子書房、2023年再出版)
    • DIR/Floortime®の「原典」とも言える入門書であり、2023年に再出版された待望の日本語版です。日本におけるDIR/Floortime®理解の必読書と言えます。
    • 子どもの真の発達を促す画期的な方法について、遊び等を通じて表面上の行動変化を目標としないアプローチを解説しています。
  • Stanley I. Greenspan, M.D. and Serena Wieder, Ph. D. 『Engaging Autism: The Floortime Approach to Helping Children Relate, Communicate and Think』 (Perseus Books, 2006)  
  • Stanley Greenspan, M.D. and Serena Wieder, Ph.D. 『The Child with Special Needs: Encouraging Intellectual and Emotional Growth』 (Perseus Books, 1997)  
  • Andrea Davis, Michelle Harwell, and Lahela Isaacson 『Floortime Strategies to Promote Development in Children and Teens: A User’s Guide to the DIR® Model』  

関連情報

  • ニューロダイバーシティ・サロン (neurodiversity.salon): DIR/Floortimeに関する記事や集中講座情報を提供  
  • 千葉大学子どものこころの発達教育研究センター (opac.ll.chiba-u.jp): 日本語での研究実践例  
  • 慶應義塾大学CCRC (ccrc.keio.ac.jp): 【CCRCインタビュー】 千葉工業大学学長 伊藤穰一先生 「普通をずらして生きる」
  • 国立特別支援教育総合研究所 (国立国会図書館デジタルコレクション): 柳澤 亜希子. 自閉症のある幼児への包括的アプローチ. 国立特別支援教育総合研究所研究紀要 / 国立特別支援教育総合研究所 編. 42:2015.3,p.1-11. https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R000000004-I026259593
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